福島の人たちの苦しみ~健康相談から見えること



東京電力福島第一原発事故から丸6年たちました。地震、津波、そして原発事故が人々を分断。故郷での日々の暮らしは元にはもどらない。それは理不尽なものです。しかし事故原因すら明らかにされぬ間に、事故を起こした人たちの罪を問わぬまま、再稼働へとひた走りする上に被災者切り捨ての政策が強行されようとしています。

先日3月4日、原発がこわい女たちの会主催で、福島の現状について医師の山崎知行さんから「福島の人たちの苦しみ~健康相談から見えること」と題してお話しをしていただきました。
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〇 福島県の「県民健康調査」においてH27年の2巡目までで甲状腺がん(疑いを含む)が184名※にのぼる。H28年からの3巡目の検査結果は未確定。※2016・12・31現在  進学などで福島を離れた子どもは検査を受けにくい場合もある。ふつう甲状腺がんは若年の子どもには殆ど現れないものであるが、原発事故の影響という特異さから手術後のフォローがとりわけ重要であると言われている。子どもたちを支援するための、NPO「3.11甲状腺がん子ども基金」(崎山比早子・代表理事)の医療費給付事業などは至極意義ある試みである。※このプロジェクトについては、女たちの会ニュース99号、100号でもおしらせしました。

〇 次に、(山崎さんはチェルノブイリの話は福島の人たちには話しにくいのですがと断りながら)、甲状腺がんが比較的低線量地域や年代的に合致しない子どもにも発症することから、放射性ヨウ素以外の核種の影響も疑われる。ウクライナの調査では、ヨウ素の影響は消失したとみられる1987年以降に生まれた子どもにも1300人近い発症があったという点を例示。

2014年12月までの小児甲状腺がん発症数(ウクライナ)
事故当時胎児で甲状腺がんになったケース 202人
事故当時0~14歳          8006人
事故当時15歳~18歳        2401人
1987年以降に生まれた子      1286人
―――――――――――――――――――――――――
合計               11895人
※DAYSJAPAN 2016年10月号 

チェルノブイリ原発では現在、循環器系や消化器系疾患などが多く心筋梗塞が急増している。事故の影響は小児甲状腺がんだけではなく、それらの非がん性疾患や、白血病、肺がんなど多種のがんが疑われている。ただ唯一、推進側も認めたのが、放射性ヨウ素が子どもの甲状腺がんを引き起こす、ということだけなのだ。
被ばくした人たちの健康に対する不安は限りないのに、国際的に認められたチェルノブイリでの小児甲状腺がんですらも、福島では「過剰診断説」をふりかざして原発事故との関連を否定し、健康検査縮小のキャンペーンが行われようとしている。チェルノブイリを教訓とせずに政府の都合のいいところだけチェルノブイリを利用して、子どもたちを切り捨てようと情報操作しているのが日本のやり方のように思える。

〇 「それにしても、チェルノブイリと福島の避難区分の違いには腹が煮えくり返るようです」と山崎さん。福島では放射線量20ミリシーベルト/年という高汚染地域の避難指示が解除されようとしている(3月末)。チェルノブイリでは強制避難ゾーンだ。原子炉施設や医療施設で立ち入りが帰省される放射線管理区域で空間線量5ミリシーベルトである。
似たような問題で、福島高校生徒※や、県環境影響研究センターなどの「福島のエートス運動」も批判された。
※これについては昨年11月、廃炉作業中の東京電力福島第一原発構内を福島高校の生徒に見学(車窓より、18歳未満として初めて)。メディアでも物議を呼んだ。かつて、通行規制が解除されたばかりの国道6号線を中高校生に清掃させた論外な事例もあった。子どもを対象に何食わぬ顔で帰還をお膳立てし原発事故をなかったことにしたい行政等の意図が透けて見えるからであろう。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nuclear/Fukushima_ethos.html

山崎知行さんは和歌山県で診療所を開業されているお医者さんです。福島の事故以前からチェルノブイリに何度も赴き原発事故の放射能被害に向き合われた方です。3.11の後は、2012年1月から日本キリスト教団より派遣されて、毎月欠かさず数日間を福島で直接に子どもの健康相談に応じるという、献身的な活動を続けて来られました。(さすがに今年からは隔月になさるそうですが)拠点は、会津放射能情報センター。https://www.aizu-center.org/

山崎さんは、むこうでの自分の役割は専門的な医療相談というよりも、「生活レベルでの交通整理」と言われます。原発事故によって、様々な無数の心配事をかかえ込まされたお母さん方。その心に寄り添うという行為がいかに必要とされていることか、しかしその態勢がいかに不足していることか。「復興」の妨げになるような言動は表面的には一切出てきません、といわれるような息苦しい社会がすでに存在するのです。

そんな中で被災者の心に寄り添う営みを長い間続け、信頼関係を確かなものにしてこられたのです。「(福島から遠く離れた)私たちはどうすればいいのか、なにができるのか」という私たちの問に、「たとえば子どもたちの保養を引き受け、とにかく福島の人たちと関わり続けることです」と明快でした。前半に視聴したDVDとともに、原発事故被災者の現状に関わり続け、何ができるかを考え続けたいと思います。


●山崎さんから本のご紹介

『心の除染という虚構』黒川祥子 、集英社 (2017/2/24)61tn2-Un5xL__SX357_BO1,204,203,200_.jpg
福島第一原発から50キロ離れた伊達市には、風にのって多量の放射性物質が降り注いだ。避難できる家と避難できない家の格差を生む政策で、分断される市民の心。先進的に取り組むはずの除染事業は失速。行政は「心の除染」を強調するようになる。不安の中、子どもたちを守るため立ち上がる市民たち、引き裂かれた地域社会を修復するため奔走する若き市議会議員…伊達市出身のノンフィクション作家が、被曝に揺れる故郷を描くヒューマン・ドキュメント! (「BOOK」データベースより)

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大飯3・4号再稼働について、原子力規制委員会が新規制基準に適合している
とする「審査書案」をまとめ、パブリック・コメントを募集しています。

http://www.jca.apc.org/mihama/saikado/ooi3_4_pub_siryo170302.pdf

 締切は3月24日です。
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